マクノートン準則
心神喪失(insanity)による無罪を決定するときの基準。
1843年イギリスの裁判所が貴族院に提出。アメリカの判例に採用。
「精神異常を根拠に弁護を成立させるためには、犯行時に当事者が、精神の疾患の故に理性を欠き、自分の行っている行為が何であり、どういう性質のものであるかを知らず、または知っていてもその行為が悪いことであることを知らなかったということが明白に証明されなければならない」
マクノートンはイギリス首相ピール暗殺未遂事件の犯人で、首相の秘書を殺害した。弁護士が「妄想」に取り付かれていたと主張、心神喪失&精神障害と認定され無罪となった。
日本の判例にも採用されている。
FBIと日本の警察
日本にはFBIのような国家警察は存在しない。警察庁は独自の実行部隊を持たない調整機関に過ぎず(例:パトカーを持っていない)、警視庁は東京都の警察組織に過ぎない。よって全国的に展開する大規模な犯罪の場合、各都道府県の警察が連携することになるが、当然のごとく情報の共有や組織の壁が問題となり、必ずしもうまく機能しない。
おとり捜査
日本ではおとり捜査で捕まって有罪となるのは「犯意をもともと持っていた」場合のみ。「犯意がなかった」場合については、昭和20年代の最高裁判例では有罪としているが、最近の判例は無罪が多い。つまり、警官が麻薬の売人に成りすまして通行人に買わせてもその通行人は無罪になる。逆に、警官が客の振りをして売人から麻薬を買う場合、売人は有罪になる。
保釈
起訴から有罪確定までの期間、被告人が拘置所から出たいと言った場合、逃亡を防ぐための保証金として保釈金を払わせる。裁判終結後に返還される。逃亡すると没収。
人によって額は違い、厚生省の元事務次官・岡光の場合5000万円、イトマンの許栄中の場合6億円(逃げたので没収)。普通の人は100-500万程度。
アメリカの場合、麻薬や銃の使用、逃亡の恐れがある場合を除いて、原則として逮捕された犯人は保釈される。日本で痴漢に間違えられて逮捕された場合、有罪を認めれば罰金5万を払って即時釈放となる(前科がつく)。しかし、無罪を主張した場合、10日間の勾留&取り調べの後、起訴される。この時点で間違えられた男性は家族や会社から見放され、奈落の底に転落する。この矛盾を解決するには、起訴前保釈や被疑者段階での弁護士選任などが必要になる。また、罰則が軽すぎるために、警察の捜査がいい加減になっているという指摘もある。
陪審制
陪審制度の基本にある考えは「真実は神だけが知り得ることで裁判官でも真実を知ることはできない。だから国民が裁判に参加して、決めたことは皆で尊重しましょう」ということだ。「真実」よりも「納得」が重視されており、根本には「真実の発見は不可能」という諦めがある。
アメリカの陪審は弁護側・検察側が提出した証拠に基づいて、犯人が有罪か無罪かの結論を多数決で評決するだけでよく、その理由は示す必要がない。法律の解釈や刑の重さは判事が決定、判決理由も判事が書く。
日本の裁判では、裁判官が判決を出して罪状理由を詳細に説明する。理由を文書で書く以上、明白な事実に反する認定・論理矛盾・法律違反はできない。これは上訴の理由となる。
職業的に訓練された裁判官による事実の認定と、一般人による事実の認定には、どちらもメリット・デメリットがある。しかし、判断に理由の記載がなければ、その当否を後で検討できず、問題のある裁判の可能性が高まる。このデメリットを容認できるかが陪審制導入を左右する。
アメリカの陪審員は全部で概ね12人。市民の司法参加という点から一般人から選ばれる。裁判の公正さの点から7-10日程度社会から隔離されるため(ホテルに缶詰)、仕事をもっている人は陪審になることを普通は拒む。陪審になりたくないなら「私は白人至上主義者だ」など適当な理由をつければ選考から自動的に外れる。こうした事情から、「国民の義務」である一方、選ばれるのは結果として「ヒマな人」になりやすく、失業者・フリーターなどの貧困層、主婦、退職後の老人、学生などがほとんどを占める。
日本の場合、陪審法は現在も存続しており、単に停止されているだけだ。陪審制の復活はやる気になれば国会で議決するだけで、すぐにもできる。ただ、陪審制は大正6年から昭和16年まで実施されていたにもかかわらず、自然消滅している。
「参審制」は、参審員という一般人が、裁判官と組んで事実認定するもので、裁判官による裁判と陪審を組み合わせたものだ。ドイツなどが採用。参審制では、判決に理由を付けるから、陪審の大きなデメリットを克服し、裁判への国民参加という陪審のメリットを実現できる。
なお、筆者は陪審制・参審制ともに反対である。
司法取引
アメリカの刑事裁判は約90%が司法取引(plea
bargain)によって「審理なし」で決着する。陪審裁判になるのは全体の7%、あと3%は「陪審なし裁判官のみ」の日本と同じ形式で裁かれる。
法廷侮辱罪
日本には法廷侮辱罪がなく、被告人の調書がマスコミに流されても誰も処罰されない。欧米では調書を流した側、報道した側も厳しく処罰される。例えば、イギリスでの硫酸ドラム缶事件(ジョン・ヘイグ)の事件のときは、タブロイド紙の編集長が禁固3ヶ月になっている。裁判に裸で出廷すると同様に厳罰になるが、日本では退廷させられるだけだ。
訴訟地選択
日本では訴訟地選択(forum
selection)ができない。たとえば、カレー毒物混入事件の林真須美被告を地元の和歌山で裁くことは公平だとはいえないが、陪審制をとっていない為に大きな問題とも言えない。ただし、「判事は偏見を持たない」という前提がある。
DNA鑑定
DNA鑑定は1985年イギリスのアレック・ジェフリーズ博士が開発した。通常使われるPCR法(合成酵素連鎖反応法)は、判例上効力が認められているが疑問の声もある。DNAを採取する細胞が完全な状態で保存されていないと正確な鑑定ができないためだ。
刑事裁判の速度
日本の場合、刑事事件の90%は被告人が罪を認めるため裁判の進行は早く、大半の裁判は2-3ヶ月で終了。また約90%が一審で決着する。
日本の刑事裁判の速度は、諸外国に比べて遜色ないレベルであり、先進国で最悪なのはイギリス。
速度が問題になるのは、弁護士が訴訟引き伸ばし戦術を展開する余地が広すぎる国においてで、日本は比較的やりづらい。例えば、判事の忌避(担当判事が偏見を持つ可能性があるとして交代を求める権利)なども、一回だけしか認められておらず、実際に引き伸ばしに使われることも少ない。
アメリカでは1000ドルの窃盗事件を2年間引き伸ばしたなどと自慢している弁護士がかなりいる。
日本で「無期懲役」の場合、平均17年で出獄。理論上は10年から可能。二度と出獄不可能な終身刑はない。
人格障害 DSMU
「人格障害は、不適応の行動パターンが深く根付いていることを特徴とし、こうしたパターンは精神異常や神経症の症状と質的にかなり異なっている。一般的にこうしたパターンは生涯を通じて続き、青春期やそれ以前までに認識できる場合が多い。人格障害には、性倒錯、アルコール中毒、ドラッグ依存症などもある。」