|
「十戒の復活を求める運動」(Movement for the Restoration of the Ten
Commandments of God)という新興宗教集団は1989年ごろ、ウガンダ人の元カトリック神父であるジョゼフ・キブウェテレ(Joseph
Kibwetere創設。キリストと聖母マリアから啓示を受けたと主張しており、そのことをめぐってカトリック教会と仲たがいして破門、十戒教団を作った。
教祖は、聖母マリアから「1999年末に大災害が起きて人類の大半が死滅し、そ
の後に新しい苦しみのない世界が始まるというメッセージを聞いた」と人々に説いて回った。ウガンダ国民の60%はキリスト教徒で、モーゼの十戒や聖母マリアの名前が出てくる彼の説教に、理解を示す人が多かった。教団は10年ほどの間に、数千人の信奉者を抱えるに至った。
ウガンダではここ数年、いくつもの新興宗教が生まれた。1970年代、アミン大統領の独裁政治によって30万人以上の反政府派の人々が殺害され、経済は破綻した。その後もクーデターが何回も起き、人々は政治に対する希望を失った。
加えて、数年前からはエイズが蔓延し、成人の1割前後が感染する事態となった。昨年からはアフリカ各地で干ばつや大水害が続いた。ウガンダを含むアフリカの多くの国々で、人々の苦しみは増し、生きる希望を持ちにくくなっている。そんな中で、従来のキリスト教会や政府など、既存の権威・権力を強烈に批判し、独自の精神世界論を展開する宗教者があちこちで登場した。
ウガンダでは、北部に「神の抵抗軍」(Lord's Resistance Army)という、キリスト教系の武装した教団が結成され、小さな子どもたちを誘拐して集団生活をさせ、「神の戦士」に育て上げることを続けたため、政府軍が取り締まりに入った。西部では、イスラム教をベースとした反政府勢力も結成されている。
こうした多様な新しい宗教団体の中では、「十戒」教団は穏健な方で、宗教法人として政府の認可も受けていた。
新教会は3月18日に完成式典を行うことになっており、その日に合わせ、全国から信者が呼び集められた。信者は「裁きの日が近い」という教祖のメッセージを聞き、家族を引き連れ、500人以上が教団本部に集まった。周辺の村人や当局に対しては「新教会が完成する祭典がある」と説明された。
3/17日朝、教祖が教団敷地内の丘の上に信者たちを集めて説教を行った。信者たちは全員が新築の教会に入ったが、その直後に大爆発が起こり、教会の中にいた全員が焼死した。
教会の内部や周囲には数カ所に、大小のガソリンタンクが置かれていた。これは数日前「新しい自家発電機を買うので燃料が必要だ」という名目で、教団幹部が近くの村の店で買ったものだった。信者は自殺するためではなく、外で起きると預言された大惨事から逃れるため教会に入ったが、全員が入った後、ガソリンに火がつけられた。
事件の後、当局が調べたところ、教団内にある教祖の住居の屋外トイレの穴の中から、6人の男性の遺体が発見された。爆破事件の1週間ほど前に殺され、身元が分からないように自動車のバッテリーの硫酸で遺体の顔を焼かれた上、トイレの穴に投げ込まれ、上からコンクリートを流し込み、見つかりにくいように処置されていた。捜査当局は、事前に集団殺害の計画を知った信者の一部が教祖に詰め寄り、逆に殺されてしまったとみている。
また、教団の本部から50キロほど離れた別の礼拝施設では、小屋の床下に、153人の刺殺・絞殺体が埋められていた。教祖の預言が当たらなかったため、教団内では1月以降、教祖を批判する信者が増えており、その対立の中で殺された人々とみられている。
|